間伐

木質バイオマス炭化、ガス化システムへの期待 三菱重工業
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1.間近に迫るロールオーバーポイント

2003年の2月6日、三菱重工業から「バイオマス利活用のための新システムで事業強化」というニュースリリースが配信された。家畜糞尿のメタン発酵によるエネルギー回収をはじめ、木質バイオマスの炭化・ガス化システム、もうひとつは概論の最後にも触れた坂井康夫教授が研究を続けてきたバイオマスからメタノールを合成する技術である。

三菱重工業株式会社技術本部具術企画部主幹部員大木良典さん。

メタン発酵・汚泥処理実績例。奈良県のエコパーク21。

「三菱重工業がバイオマスエネルギーに熱心なのは、2001年に亡くなった金森相談役(元三菱重工業社長・会長)が、農業とエネルギーの共存ということを唱えていたのが大きいですね。1987年頃から、日本の林業や農業はこのままでは荒廃する。なんとかしなければ、ということをいっていたんです。現在は、エネルギー源の多様化と、温暖化防止という2本の柱で、さまざまな自然エネルギーの開発を行っています。その中でバイオマスは、酪農から出てくる糞尿の有効活用、間伐材の有効活用、それからエネルギー作物の活用の3つの研究開発を進めています」と語るのは、三菱重工業株式会社技術本部具術企画部主幹部員の大木良典さん。

「京都議定書での日本のCO2排出削減目標は6%。そのうち森林による吸収分が3.9%になっていますが、これは森林がきちんと維持管理されているというのが条件になっています。除間伐された木が放置されていては、CO2を排出ばかりかメタンまで出す結果になりますから、それらを資源として利用しなくてはならない。除間伐された木材や、製材廃材は放っておけばメタンガスを出すことになるけど、資源として利用すればエネルギーになる」(大木)。

石油はいずれ使えなくなる。これは誰しもが知っている事実。どの本を開いても、今世紀の半ばには、枯渇するという記述に出会う。だが、石油危機はもっと早くやってくる。今世紀の半ばに、すべての油田が枯渇するとすれば、それは同時に枯渇するわけではない。一つ消え、二つ消えという具合である。つまり、現在のように潤沢に石油は出てこなくなるわけである。すると、どうなるか? 需給のバランスがくずれて、石油価格の暴騰が始まる。これを、ロールオーバーポイントと呼ぶのだが、これが2015年から2020年の間に来ると予測されているのだ。そのロールオーバーポイントを迎えたときに、エネルギーの多様化という準備ができていないととんでもないことになるのだけは目に見えている。終わりのない石油ショックが世界中を襲うのである。


 バイオマスの種類

バイオマスの種類


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