日本の森を守る「間伐」
エピローグ 間伐は日本の森を守るとともに、地球温暖化防止に貢献
日本の森林を守るボランティアに始まり、間伐材を利用した紙製品、間伐材を利用したインテリアや家作りの例を駆け足で紹介してきましたが、最後になぜ間伐が必要なのか? を考えてみましょう。
生活の根源を支える森
光が適度に差し込む森林。
光が適度に差し込む森林。

都会に住んでいると、森林や海洋や農地の必要性を実感することは滅多にありません。まるで、自動車と電車とスーパーマーケットさえあれば、生きていけるという錯覚を抱くほど。でも、少し考えてみればわかるように農地や海洋がなければ野菜も、肉も、魚もスーパーの店頭に並ぶことはありません。では、森林はどうでしょうか? 木の家に住んでいない限り、つまり、マンションなどに住んでいる限り、森はなくてもいいのでは? という風に思う人が多くなるのも無理はありません。しかし、森林がなければ、われわれは現在のような生活をいとなむことはできなくなってしまいます。まず、飲み水。森は降った雨を蓄え、濾過し、おいしく飲める水を川に流します。その水は、私たちの飲み水や生活、さらには産業に使われます。例えば、紙を1kg作るのに、200kgの水が必要になります。潤沢な水がなければ、私たちは紙一枚手に入れることもできないのです。

さらには、森があるおかげで、その水は枯れ葉などが分解された養分に富むものになっています。その水が海に流れ込むことで、魚を育てています。上流の森が健全に保たれていない海では、魚の数が減り、漁業もたち行かなくなっています。そのため、漁師が木を植える、という動きも出ています。

 
森の持つ価値
飲み水や海の恵みだけではありません。森がなければ、雨により土砂が崩れてしまい、土地の浸食も進んでしまいます。森林がなくなれば、赤茶けた荒涼とした大地の拡がる異国の土地のようになってしまいかねないのです。『緑のダム宣言』という本では、森林の持つこれらの機能を、もしも人工物で補うとしたらどれほどかかるかを金額で表しています。これによると、水源涵養機能が8兆7400億円、洪水防止が5兆5700億円、水質浄化が12兆8100億円、土砂流出防止機能は、28兆2600億円にもなります。その他の大気保全などの機能と合わせると、74兆9900億円にも上ります。これが1年の数字なのです。

もうひとつ、決定的な機能が森林の持つ二酸化炭素の吸収し、酸素を出してくれる機能です。これが地球温暖化抑止のために期待される森林の役割です。日本は、京都議定書で定められた二酸化炭素の排出量削減量の一部を森林による吸収分でまかなうことが国際的に認められています。

 
森を活性化させるための間伐

さて、森林の恩恵は以上のように計り知れないのですが、その森を守るために間伐、つまり木を伐採することがどうして重要なのか、を紹介しましょう。森林は、大きく分けて人工林と天然林に分類されます。天然林は生育過程が、その名の通り、自然の力を利用して生長し、衰退していくものです。山火事などが起こり、壊滅的な被害を受けない限りはあまり人が手を加える必要はありません。

実際の間伐作業。いま、若い森林労働者を増やさなくては、熟練の森林作業のノウハウも失われてしまう
実際の間伐作業。いま、若い森林労働者を増やさなくては、熟練の森林作業のノウハウも失われてしまう。

一方、スギやヒノキなどのいわゆる人工林は、人の手によって植林をします。植裁本数は1haあたりに3000本もの苗木が植えられます。これが最終的には500〜600本になります。つまり4/5程度は間伐などをしなくてはならないのです。人工林を適切に維持するためには、間伐の他に枝打ちや下草刈りなどの作業が必要です。いずれも、森の中に日照を確保するための作業になります。かつては、間伐材も建築現場の足場や様々な木工製品などに利用されるという需要もあったのですが、現在では間伐材は驚くほど安値でしか取引されていません。間伐のためにかかる人件費も出ないほど安価なのです。それでも、きちんと生長した木材が適切な価格で取引されるのであれば、そのための投資として間伐を行うこともできますが、成長した木材ですら驚くほどの安値でしか売れなくなっているのです。それは、海外から想像を絶するほど安価な木材が流入しているからです。海外からの木材輸入のすべてに問題があるわけではなりません。カナダや北欧のような持続可能な林業から生み出される木材なら問題は少ないのですが、東南アジアなどから送られてくる木材は持続可能ではない、植林を伴わない皆伐などによって送られてくる木材が大量に含まれているのです。また、ロシアからは他人の森林の木材を無断で伐採したいわゆる盗伐による木材も流入しているといわれています。これらの木材が流入していることで、木材価格が下がり、それにともなって国産材も安価でしか取引されなくなっているのです。そのことが日本の林業を圧迫しています。予算が足りずに間伐などの手入れが行えなくなっているのです。適切に間伐が行われない人工林では、木は生命力を失い、十分に根を張ることもできなくなり、いわゆる線香林と呼ばれるひ弱な人工林が拡がっていきます。こうした人工林は、冒頭に書いたような森の機能を十分に果たすことはできません。さらに、日本が海外から違法伐採された木材を購入することにより、世界規模の森林面積の減少、ひいては世界の環境破壊という事態も招いています。

日本は、森林面積が国土の67%を占める森林国家です。これらの森から毎年出てくる森林資源は、日本の木材需要の90%前後をまかなえるといわれていますが、実際には20%程度しか利用されていないのが現状です。国内の森林を守るためにも、世界の森林資源を守るためにも、国産材を使うことが求められているのです。現在、日本の森の状況に危機感を持つ多くの人びとが、間伐材を使った製品を開発、販売しています。日本の森林を守るために、都市部に生活する私たちにできることは、こうした製品を積極的に購入し、使うことなのです。かつては、間伐材を含む国産材を使った家具や家は高価であるというのが常識になっていました。しかし、最近は事業に携わる人びとの努力により、海外からの輸入品と十分に競合できる価格になっています。

日本の森を守るために、そして世界の森を守るために、日本の森の恵みを生活に取り入れてみませんか?

 
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