間伐

持続可能社会のエネルギー源 木質バイオマス現場レポート3
 岩手木質バイオマス研究会
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3.木質バイオマスを軌道に乗せるために

岩手木質バイオマス研究会で、「岩手型」ペレットストーブを作ろうと決めたのは、利用する機器がないのに、ペレットを普及させることはできない、という反省からだった。木質資源の有効利用をしたいと思っていても、大型のボイラーを設置しなくてはならないのなら、一般の人には手が出ないからである。

「ペレットを作っても、出口、つまり使うところがない。だったらストーブを作ろうよ、シンボルにもなるし、ということで始めたんです。せっかく岩手型を作るのなら、南部鉄を使って、お年寄りにも優しくて、マンションでも使えるものを、ということで今の形になったんです。日本では内燃機関に関しては、理論も技術も進んでいるんですが、ものを直接燃やすというテクノロジーは、学校では教えてくれないんですね。みんな会社に入ってから勉強する。木質ペレットを燃やすということに関しても、ゼロからのスタートですからサンポットさんもずいぶん苦労されたようですね。でもできあがって、量産を開始するということがテレビ放映されてからの反響はすさまじいものがありました。中には、中東情勢をにらんでの投機的なものもあったんですが」(金沢)。

もちろん、儲けだけを考えると、まだまだ木質ペレットは商売にはなりにくい。だが、木質ペレットの生産工場は、現在7か所で計画、検討されているという。岩手県では、この特集の1回目の現場レポートで紹介した気仙地方森林組合のお膝元住田町にもペレット工場が作られるという。

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燃料の98%が「木」で世界的に有名なヴェクショー市のコージェネ施設・サンドヴィックプラント。奥が最新のサンドヴィック◆
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乾燥した枝葉の木質バイオマスを、自走式のチッパーで粉砕する模様。ヴェクショー市郊外で。

「現在、熱量換算でペレットの価格は灯油の1.2倍なんですね。これに輸送費を乗せると、約1.5倍になってしまう。理屈では、灯油を使うということは温暖化の原因にもなるし、よくないことだって思っていても、1.5倍の価格差があると、やはり灯油が使えるうちは灯油で、ということになってしまう。輸送費を含めて、灯油の1.2倍でペレットを供給できるようになる、というのが当面の目標ですね。岩手型ペレットストーブ1台で年間約1tのペレットを消費します。これが1000台作られたとして、年間4000tのペレットが必要なんです。葛巻林業で約3000tの生産が可能なので、似たような工場がもう一つできれば木質ペレットの供給は無理なくできる。ペレットの原材料に関しても、間伐、除伐した木材や枝などを林道を走りながら、アームを伸ばして回収していくグラップルという装置があるんですが、これを使っていけば十分な量を確保できる。林家は、林道の6m以内のところに使用しない木材を転がしているだけでいい。こうしたシステムが完成して、需要も増えていけばコストダウンの可能性も見えてくると思います。それから、大型のボイラーなどでは、熱量を上げていってペレットになる前の乾燥していないチップを放り込めるような設備を作っていきたいですね。これができるようになると、間伐材や除伐材の活用範囲が広がっていく」(金沢)。

岩手木質バイオマス研究会では、木質ペレットとペレットストーブだけに力を入れているわけではない。木材チップや廃材などを利用したコージェネによる地域熱供給や発電施設の可能性も探っている。「バイオマス利用の先進国、スウェーデンの人たちからは電力よりも熱を優先させなさい、といわれています。いずれにしても、スウェーデンでも20年かかってるんです。急いでやって、失敗したくない。1回の失敗で、ほら見ろ、木質バイオマスはやはりダメだ、ということになってしまう」(金沢)のが怖いのでる。

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森林から出た木質バイオマスのチップ搬送する大型のトレーラー。一度エネルギー量を計測後、直接施設に搬送する。
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粉砕された木質バイオマスのチップ。日本の製紙用よりおおまかで、鋭角に尖っている。スウェーデン・ヴェクショー市周辺。

木質バイオマスの利用には、チップなどの材料をいかに集約するか、という物理的問題の他に、コージェネなどの施設の設計、燃焼炉の設計・製作などの技術的問題もある。前者の問題は地域のフットワークをいかに軽くしていくか、という命題をクリアしなくてはならないだろう。だが、後者に関してはある程度楽観できるのではないだろうか? 日本の技術力は、世界でもTOPクラスである。石油と比較すると高温を得にくい木質バイオマスの燃焼技術でも、画期的なものを生み出してくれるはず。例えば、最近注目の集まっている酸素富化膜の活用で、酸素濃度の高い空気を送り込むことで燃焼効率は格段に高まり、高温燃焼も可能になる。木質バイオマスの活用に、日本の技術力が結集すれば、これまでの木質資源の限界も軽く飛び越えられるのではないだろうか。

「スギの価格は、現在昭和31年現在の価格レベルなんです。僕が平成8年に岩手に帰ってからでも、1/3になっているんですよ。今の日本の林業は、さまざまな矛盾をはらんだ産業です。その中で木質バイオマスの活用に活路を見いだしていきたいと思っているんです。そのために、他の産業の人と手を組んで仕事をすることも多くなってきています」(金沢)と話すように、研究会には行政関係、役所関係、大学の研究者、コンサルティング会社、機械メーカー、プラントメーカーなど多岐にわたる分野の人々が集まっている。深刻化した林業危機の打開策は、こうした横に広がるネットワークの中から見つかるかもしれない。岩手木質バイオマス研究会の活動と成果にはこれからも注目していきたい。


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