森林土木木製構造物暫定設計指針

1.目 的
 この指針は、間伐材等を利用した簡易な木製施設の設計・施工上の指針を定め、木材・木製品の有効かつ合理的、積極的な利用の推進に資することを目的とする。

2.木製構造物の範囲
 この指針において木製構造物とは、主として木材・木製品を使用し、特別の場合を除き安定計算、部材応力計算を必要としない箇所に設置する簡易な木製構造物で、構造物が腐朽しても植生の繁茂等によってその機能の代替が期待できる場合又は短期間の使用を前提とする場合等に設置するものをいう。

3.森林土木構造物の部材としての木材の特質
 木材を森林土木構造物の部材として使用する場合、木材の性質として次の点に着目する必要がある。

(1)
木材は、軽量であり取扱いや運搬が容易、加工が簡単で工作設備が簡易、比重の小さい割に強度が大きい、音や振動、衝撃の吸収性が高い、外観が美しく味わい深く周囲の景観、環境になじみやすいなどの木材特有の利点がある。

(2)
腐朽し易く、防腐処理をしても耐朽性は増すが腐朽は避けられないことから、腐朽することを前提に設計・施工する必要がある。ただし、水中あるいは土中等に設置する場合は、比較的長期間他の部材と同等の耐久性を期待できる場合がある。

(3)
材質が個体、部位、方向等によって不均質であり、腐朽等による劣化も不均質なため、厳密な強度計算、部材応力計算は困難である。

4.木製構造物の設計に当たっての留意点

(1)
計画箇所等について
 森林土木事業の設計に当たっては、3で述べた木材の特質に基づき、次に掲げるような場合に、積極的な木製構造物の設置を検討するものとする。
  1. (1)流水が少なく、土石流等のおそれのない小渓流に設置するダム工、護岸工、流路工等の構造物で、部材が腐朽するまでの間に植生の繁茂等によりその機能の代替が見込まれるものあるいは自然堆砂、水締め等により構造物の必要が無くなるもの。
  2. (2)背面土圧の小さな土留工、擁壁等の構造物で、部材が腐朽するまでの間に植生の繁茂等によりその機能の代替が見込まれるもの。なお、長大斜面、傾斜の急な斜面での山腹工等の計画に当たっては、コンクリート・鋼製の構造物に組み合わせて、木製構造物の使用を検討すること。
  3. (3)柵工、筋工、軽量のり枠工等の緑化基礎工、のり面保護工で、植生の繁茂により斜面の侵食防止、安定が図られ、機能の代替が見込まれるもの。
  4. (4)海岸防災林造成における防風垣等の構造物で、樹木の成長等によって、その機能の代替が見込まれるもの。
  5. (5)土中に設置する基礎杭、埋設工、水中に設置する簡易な工作物等腐朽しにくく長期間の効果が期待できるもの。
  6. (6)のり尻の保護等土圧が極めて小さい箇所に設置するもの。
  7. (7)工事用の仮設防護柵、応急復旧工事の構造物で、一時的な使用に供するもの。
  8. (8)道路の横断排水工等簡易な構造物で、維持管理が容易でこれにより機能維持が可能なもの。
  9. (9)落石緩衝工等衝撃の吸収性が高い木材の特性を活かしたもの。
  10. (10)標識類、化粧材、木歩道等景観、環境保全上木材の使用が望ましいもの。

(2)
耐朽性について
 木材は、特別の場合を除き腐朽することは避けがたい材料であるが、腐朽の度合いは樹種によって異なっており、使用に当たっては入手の容易な樹種の中からできるだけ耐朽性のあるものを選定することが望ましい。
 木製構造物の耐用年数については、樹種、設置場所等の条件等により差があって一律には決めがたい面があるが、水中に設置する場合等を除き、当面最大10年程度を目安とする。
(参考)
1. 心材の耐朽性の区分

区  分

樹  種
最大(9年以上) カヤ、コウヤマキ
大(7.0〜8.5年) ヒノキ、サワラ、アスナロ、ヒバ、クリ、ケヤキ
中(5.0〜6.5年) スギ、カラマツ、アカマツ、クロマツ、ミズナラ、アラカシ、シラカシ
小(3.0〜4.5年) モミ、アカガシ、ブナ、コナラ
最小(2.5年以下) トドマツ、シラカンバ、エゾマツ、クスノキ
(日本産及ぴ南洋産材の野外に設置した杭の腐朽経過と耐用年数、林業試験場研究報告第329号抜粋(供試体の大きさ3×3×60cm))

(3)
材料強度について
 簡易な木製構造物は、原則的に安定計算、部材応力計算を要しない箇所に設置するものでありその安定性、強度等は、経験則に基づくものであるが、新たな用途等で安定性及ぴ強度の目安を求める場合の木材の材料強度等は次表に掲げる建築基準法施行令に定める値を参考とするのが妥当と考えられる。
(参考)
1. 建築基準法施行令第89条に定める木材の許容応力度 (単位kg/cm2)

区  分
 あかまつ
 くろまつ
 ひのき
 からまつ
 すぎ

備 考
 引張曲げ

95

90

75
 
 せん断

8

7

6
 
 圧 縮

75

70

60
 

2. 主な木製構造物の設計計算例
   別添「木製構造物の設計計算例」

(4)
防腐処理等薬剤の使用
 防腐処理等薬剤処理は、使用する薬剤の性質、下流への影響等を考慮して行うこと。特に、取水施設上流水源地等水質の保全を図るべき箇所においては慎重に検討する必要がある。
 なお、防腐処理等薬剤処理に使用する薬剤は、安全性が確認されているものとしなけれぱならない。

5.材料の選定
 防腐処理等薬剤処理は、使用する薬剤の性質、下流への影響等を考慮して行うこと。特に、取水施設上流水源地等水質の保全を図るべき箇所においては慎重に検討する必要がある。
 なお、防腐処理等薬剤処理に使用する薬剤は、安全性が確認されているものとしなけれぱならない。

(1)
木製構造物に使用する木材は使用目的に適合する材質のもので、有害な欠点(腐れ、割れ等)のないものでなけれぱならない。

(2)
木製構造物の部材の寸法の表示は、一般に製材品(丸棒加工品を含む)については仕上がり寸法とし、丸太材については末口寸法表示を標準とする。なお、設計・施工に当たっては、自然産物である丸太材の特性等を考慮して、可能な限り寸法等に許容幅を持たせた適用とすることが望ましい。