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雇用管理改善と事業合理化の取り組み:宮崎県 永徳木材有限会社

1.地域の概要

当社の所在する都城地域は、宮崎県の南西部の鹿児島県境に位置している。豊かな森林が広がる霧島山系と飫肥林業地帯に続く鰐塚山系に囲まれた盆地であり、交通の要衝にあることから、木材の集散地として古くから林業や木材産業が発達しており、南九州最大の木材供給基地となっている。森林面積は、地域面積76,332haの約58%にあたる43,856haであり、このうち国有林は21,561ha、民有林は22,295haでほぼ半数ずつとなっている。また、木材生産の主な対象である人工林は、国有林と民有林合せて31,581ha(人工林率72%)に上っている。

2.会社の概要

所在地:宮崎県都城市都北町3629番地
設 立:昭和49年5月1日
資本金:5,000千円
従業員数:5名
事業種目:素材生産事業、造林事業
19年度事業量:素材生産13,464m3、造林17.4ha

3.事業合理化の取り組みと成果

(1)事業合理化推進の動機

設立直後の昭和50年に、国有林材生産で失敗し赤字を出した。高値で落札し、価格が下落したことが直接の原因であったが、当時の集運材作業は架線作業に依存していたため、作業効率の向上や事業期間の短縮が思うようにいかず、このような結果に繋がった。この時以来、効率的な生産システムの構築は、当社の課題となってきた。

このような状況はその後も続いていたが、平成に入ってから木材価格の下落が続いたことに加え、労働力の減少と高齢化が進んだことから、労働環境の改善なくしては若い優秀な人材の確保は難しくなってきたと考え、生産と雇用の両面から抜本的な対策を検討し、生産コストの低減、労働強度の軽減、労働災害の防止等を図るため、高性能林業機械を導入することとした。

(2)高性能林業機械等の整備状況(19年度現在稼働中の機械)
種 別台数導入時期等
プロセッサリース利用
スイングヤーダH18(付け替え)
グラップルH16、H18
フォワーダH10、H18
(*20年度にプロセッサ1台を購入)
(3)技術者の養成

素材生産現場では、伐採、集材、造材、積み込み、運搬など、どの作業が欠けても生産性が低下するため、必要な資格や免許は全員が取得するようにしている。このことは、生産性の向上だけでなく労働条件の改善や労働災害防止のためにも重要と考えている。現在も2名の従業員を緑の雇用担い手対策事業で養成中である。

(4)取り組みの成果

以上の取り組みにより、徐々にではあるが、事業実績、労働生産性ともに向上している。また、高性能林業機械を活用した作業システムを検討することにより工場直納にも対応できるようになった。

素材生産量及び労働生産性の推移(注:伐採関係は外注で含んでいない。)
区 分平15平16平17平18平19
素材生産量 m38,4047,99612,22717,31413,464
労働生産性 m3/人日6.97.9災害復旧活動に従事11.0

4.雇用管理改善の取り組みと成果

(1)雇用条件改善の推進と成果

雇用管理面では、安心して就業できる労働環境を目標として、次の改善措置に取り組んだ。労働保険や社会保険関係では、平成19年度現在、5名全員が通年雇用で、労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金に加入している。給与関係では、1名が月給制で4名を日給制としており、全員に年2回の賞与と決算手当を支給している。

(2)安全対策の推進

設立前の昭和47年に、トビで荷積み作業をしていた20歳のトラック運転手の頭部を全幹集材の木材が打撃し即死させるという痛ましい事故が発生した。それ以来、この事故を教訓に災害ゼロの取り組みに努めてきた。

安全対策としては、朝礼時の防災ポイントの確認や指さし呼称の励行、また、現地研修会も実施しており、更に赤色系の目立つ作業服の着用やオペレーター室への無線機の配備なども実施している。

平成17年には、県森連から岡山県の台風災害の支援の要請があり、約60haの風倒木処理作業に1年以上従事した。このような風倒木の処理という危険性の高い作業を通じた経験を活かし、今後とも安全対策の推進を図っていきたい。

5.今後の方針

全国的にスギとヒノキの伐期を迎えつつあるが、大幅な素材価格の上昇は期待できない。当社では高性能林業機械等を活用し、更なる生産性の向上を図り、雇用管理を充実させるなど、生産体制の強化を通じて林業に展望を拓いていく所存である。