*********************************            森林環境教育ネットワークメールマガジン                    第 32 号                  平成18年6月30日 *********************************  □今号の目次    1. 「森林体験学習等における安全管理手法に関する調査報告」について    2. 森づくりとその担い手を考えてみましたの巻    3. フィリピンの森林・林業事情(9)    4.森林環境教育リレートーク      5.林野庁ホームページのご紹介:特報版    6.イベントのご案内      ◆レンズを通して自然観察「デジカメ森林探検隊」 **---***---***---***---***---***---***---***---***---***---**  カタツムリ、皆さんご存知のとおり別名「でんでんむし」といいます。東京・ 神田界隈と東京湾ゼロメートル地帯が主な生活エリアになってから、私は 全く見かけません。童謡に登場するような定番の生き物たちでも、あまり 見かけなくなった生き物たちがいることに気付き、ちょっとショックでした。  身近な生き物から学ぶことはたくさんあります。里山の再生といった活動 は、そんな生き物たちを再生することもきっと期待されているのではないで しょうか。  では、今号もよろしくお付き合いください。    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  ◆ネットワーク会員の登録は6月30日現在 No.459に達しました。  ◆イベント情報    6月15日以降、新たに3つのイベントが登録されました。    詳しくは、ホームページ“イベント情報”まで。      →http://www.zenmori.org/feenet/einfo/    また、今号は“レンズを通して自然観察「デジカメ森林探検隊」”    のご案内を掲載いたしました。 **---***---***---***---***---***---***---***---***---***---** 1.「森林体験学習等における安全管理手法に関する調査報告」について  森林体験学習等における事故事例や安全管理について、全国的な実態に 関する体系的な資料がなく、今後増加するであろう参加者の増加に伴って生 じるリスクに対処し、森林体験学習等を推進していくためには、実態を踏まえた 安全管理体制の充実を図る必要があります。  このため、林野庁では、平成16年度〜平成17年度にわたり、森林体験学 習等における事故事例や安全管理の全国的な実態について把握するとともに、 森林体験学習等において発生及び発生が予見される事件・事故・災害等につ いて、それを未然に防止し、又は発生した場合の適切な対応及び再発防止策 について調査検討を行い、報告書として作成しました。  本報告書の内容は、各分野の専門家(体験活動の主催者、教育者、森林 インストラクター、弁護士、損害保険)からみた森林体験活動の安全管理につ いての意見、指導者が知っておくべき森林体験学習・山歩き・森づくりの安全 管理、指導者が安全管理チェックシートを作成するための参考例等、森林体験 活動指導者が知っておく必要のある一般的な安全管理に関する項目を取りま とめています。  なお、このたびこの報告書をハンドブック形式に編集した「安全管理ハンド ブック」として冊子にしました。冊数に限りがありますが、希望される方は下記 アドレスまでお知らせ下さい。 ○アドレス:yasuhiro_sato@nm.maff.go.jp(林野庁計画課 佐藤まで) ――――――――――――――――――――――――――――――――― 2.森づくりとその担い手を考えてみましたの巻  先日、森林ボランティア向けの森林整備マニュアルを作成する会合に出席 する機会がありました。参加者は現場で造林や素材生産に従事しているいわ ゆる林業のプロと、森林ボランティア活動を推進しているNPOの方々などでした。 とはいっても、熟練の差こそあれ全員がチェンソーの経験者です。  いままでの僕の頭の中では、「森林ボランティア=休日に植林をしたりノコ で細い木を除間伐する都市生活者」という勝手なイメージがありました。ところ がここ数年の人工林の成長により、すでにノコで伐倒する太さを越えていて、 その結果ボランティアがチェンソーで間伐しているという話を聞いて驚きました。 しかし、地域差はあっても若い人工林は減少しているので、考えてみれば当然 の流れでしょう。また、現場の人が使うチェンソーは安くても10万円くらいはしま すが、逆にホームセンターで数万円出せば買えるチェンソーもあるので、それ ほど高価な道具でもないわけです。  結論として、いろいろな経歴と思いを持った人たちが集まっていたので、ボラ ンティア向けのチェンソーマニュアル作りはなかなかまとまりませんでした (ナタやノコの使い方は前回の会合の議題でした)。  まず、ボランティア活動の内容としてどこまでが適切かということです。植付け で大ケガをする人はほとんどいないでしょうが、間伐の場合、木の直径や樹種・ 混み具合・地形などで危険度が大きく変わります。大きな木を伐る場合、くさび やロープ、チルホールなどの補助具を使う技術も必要になってきます。また、 広葉樹は裂けやすいため、伐倒時の危険性はスギなどの針葉樹とは比較に なりません。安全な作業を追及することは、より多くの知識・認識とより高度な 技術を持つことにほかなりません。年間200日以上山に入っている林業従事者 と比較して、経験を積む機会が極端に少ないボランティアの方々がチェンソー を持つことには大きな不安があります。  日常生活では、刃物というとはさみと包丁くらいのものでしょう。それに対して、 造林作業ではそれこそ1日中刃物を振り回します。その刃物にエンジンがつい ているチェンソーという道具がいかに危険かということは、大きいチェンソーなら その排気量は原付以上だということで少し想像できるかもしれません。足場の 悪い傾斜地で、時速60km出せる乗り物と同じくらいの大きさのエンジンをた だ両手だけで操るわけです。休日に都市部から山にやってきてチェンソーで 木を伐るという行為は、考え方によっては非常に危険なギャンブルです。  なにやら森林ボランティア活動に否定的な内容になってしまいましたが、とに かく山の仕事に伴う危険性を認識してほしいということなのです。現在日本で はそこらじゅうに間伐遅れの人工林があり、同時に林業に携わる人が年々 減少し、高齢化していることも事実ですが、だからといってボランティアの方々 が林業従事者と同じことをやるべきなのでしょうか。  そもそも林業という産業は素材(木材)生産業ですが、環境保全の必要性が 明らかな現代では、それに加えて自然と調和した長期的計画やゾーニング、 都市部とのパートナーシップが不可欠です。このパートナーシップという意味に おいて、普段全く異なる生活(住む場所も仕事も)をしている者同士の掛け橋 として、森林ボランティア活動に寄せられる期待には非常に大きなものがあり ます。  僕自身、林業で生計を立てていたことがありますが、以前東京から出たこと のない友人に「木はどうやって伐るの?」と聞かれたことがあります。彼女は 漠然と「きこり=半年くらい山にこもって、オノで木を切って丸太を川に流す ヒト」というイメージを持っていました。これは極端な例ですが、実際問題として 交流の場が少ないような気がします。  林業はGDPの1%にも満たない産業ですが、その対象は国土の2/3を占める 森林です。林業関係者とボランティアの連携などを通じて、今後はもっと多くの 人々に山の仕事を知ってもらいつつも、同時に旅行や体験ツアーなどで山の 生活を楽しめるような場が増えればすばらしいと思います。 ――――――――――――――――――――――――――――――――― 3.フィリピンの森林・林業事情(9)  フィリピン政府が1995年から開始したCBFM(コミュニティを基盤とする森林 管理)という制度を有効活用するために始めたプロジェクトの紹介を数回前から 続けていますが、今回は、そのプロジェクトの活動の一つである苗作りの様子を 紹介したいと思います。  このプロジェクトの目的の一つは、CBFMを取得した、もしくは取得しようとす る地域の住民組織に対して見本となる森林経営のモデル地区を確立すること で、政府のCBFMの取り組みがより効果的に広がることを期待して、2003年2 月から計画を始めたものです。しかしながら、プロジェクト対象地域の住民は、 林業経営の経験がありません。天然林から森林資源を採集・収穫する経験は あっても、林業という行為は初めてとなります。つまり、一からのスタートという ことです。  前回は、彼らの村落内に苗畑を作る様子を紹介しましたが、今回は、その次 の作業である苗作りを紹介したいと思います。  苗作りには、挿し木で作る方法や種から育てる方法などいろいろありますが、 ここでは、小さなポットの中に種を蒔いて育てるポット苗を作ることにしました。 ポット苗は、裸苗に比べて重く、持ち運びが大変ですが、痩せた土地に植栽す るため、苗の活着率を考えるとやむを得ません。  苗作りですが、10年間のプロジェクトの初年度ということで、まずは、目標と して5000個の苗を育てることにしました。プロジェクトの対象地の面積 (約80ha)を考えるともう少しがんばりたいところですが、無理は禁物です。 とはいえ、それでもかなりの仕事量になります。皆で分担してまずは、ポットに 土をつめる作業からはじめました。  炎天下でのこの作業は、かなり大変なものでしたが、皆積極的に参加してく れました。大学の実習という位置付けで大学生にも手伝ってもらい、思った以 上に順調に作業が進んでいきました。ちなみに、暑いフィリピンの外仕事では、 結構長くお昼休みをとります。昼食を食べて日陰で昼寝をしながら日中の一 番暑い時間をしのぐわけですが、大学生と一緒に作業したときは、なんと午後 3時まで昼休みを取っていました。ちょっと長すぎでは?と思いましたが、確か にこの暑さでは、仕方がないなと納得し、一緒に休憩しました。ただ、日陰とは いえ暑くてとても昼寝はできませんでしたが・・・。  他にも村の小さな子供達が土遊び感覚で手伝って(遊びにきて?)くれたお かげで、とても賑やかで楽しげな作業現場になったぁw)\0アとは、非常に良いこ とでした。単純作業の繰り返しで退屈な仕事でも、フィリピンの人たちの明るさ が加われば随分雰囲気が変わるものだと感心しました。  土を詰め終わったポットから順々に、種を埋めていき、ついにポットの準備が 終わりました。苗畑にずらりと並んだ5000個のポットは実に迫力あるものでした。 ここまでくると後は、水まきをしながら、芽が出てくるのを待つだけです。そして、 1ヶ月も経たない内に芽が出てきました。発芽率はまずまずで、若干、ネズミなど に種を食べられる被害や葉を虫に食べられる被害はありましたが、多くの苗は、 すくすくと育っていきました。3ヶ月経った頃には、もう十分植えられるほどの大 きさになり、熱帯の成長力のすさまじさには、驚かされました。最初は、土の色 一色の地味だった苗畑内が、明るい緑色で埋め尽くされた光景を見て、とりあ えず、一安心といったところです。  地域で取り組むプロジェクトが段々と目に見える形になってきました。次は、 植栽です。次回は、この植栽の様子について紹介していきたいと思います。 -続く- ――――――――――――――――――――――――――――――――― 4.森林環境教育リレートーク(第12話) 「九州の山奥で森林のエリート集団発見」  信州大学から九州大学へバトンが回ってきました。現在、私は、第30号の 10番目の走者によって紹介いただいた九州大学北海道演習林に勤務してお り、一般市民・子供たちを対象にした教育事業をいくつか行っております。  ここでは、前勤務地である九州大学宮崎演習林で経験したことを紹介し、 次の走者にバトンを渡したいと思います。  九州大学宮崎演習林は、九州脊梁山地、平家の落人伝説で有名な宮崎県 椎葉村にあります。事務所がある大河内地区には、児童数わずか10名程度の 大河内小学校があり、年1回全児童を対象にした森林教室を開催しております。  ある日、子供達から森林教室に対するお礼状が届きましたが,表紙を見て 大変驚かされました。表紙には、子供たちが描いた樹木の絵が数多く描かれ ていましたが,針葉樹や広葉樹の違いはもちろん、各樹種の葉や幹の特徴を 実にみごとにとらえた絵だったのです。  だいぶ前に森林科学を専攻する大学生に森や木の絵を描かせたことがあり ましたが、棒状の幹の上に葉の部分と思われる円を載せただけの幼稚な絵を 描く学生が何人もいて、森林が好きで専攻する学生であっても、森や樹木をす るどく観察する能力をもった学生が減ってきている〜と感じていたところでした のでまさに驚きでした。  豊かな自然に囲まれて育った大河内の子供たちには、日頃の生活のなかで 自然をするどく観察する能力がしらずしらずのうちに養われているのかもしれ ません。このことって都会の子供たちが容易に身に着けることができないすば らしい能力ではないでしょうか。幼いころからの自然体験の重要性を強く感じた 次第です。 九州大演習林 S・K → 愛媛大演習林 O.K ――――――――――――――――――――――――――――――――― 5.林野庁ホームページのご紹介:特報版 http://www.rinya.maff.go.jp/  このメルマガでは、毎回項目のみを淡々と紹介している林野庁ホームページ ですが、今月は注目いただきたい話題がいくつかあるため、若干のコメントを 付けた「特報版」とし、並び順に上から3つの話題をご紹介します。  まず、メルマガ28号でも紹介した「企業の森林整備活動に関する検討会」 の報告が出されました。大まかな内容は、企業が森林整備に参加しやすくな るための環境作り等をどのようにするかというものであり、国有林の受け入れ 態勢の充実や、企業・NPO・森林所有者等の橋渡しを行うサポート組織づくり、 定量的にわかりやすい活動の評価方法などがそのポイントです。  また、報告書には本文の他に、CSRとは、企業の取組事例、国有林の「法 人の森林」制度の概要、都道府県における「企業の森」などの設定状況など、 充実した参考資料も添付されています。是非、ダウンロードしてご覧下さい。  次は、「新たな森林・林業基本計画の策定に向けて」です。これについて もメルマガ28号で取り上げましたが、今回、ホームページを整理し、これまで の審議状況、提出資料の入手がとても便利になりました。  6月26日の林政審議会には、ついに素案が示され、次回の審議会後には パブリックコメントにかけることとなります。9月の決定に向けて急ピッチで審 議が進められているところです。  最後は、「山村力(やまぢから)誘発モデル事業」の2次公募についてです。 こちらもメルマガ30号で二次公募が近く開始されることをお知らせしましたが、 7月14日の締め切りまで、あと2週間となりました。応募要領等はトップページ からダウンロードできます。  また、6月16日付けのプレスリリースでは、一次公募で選定された13プランの 概要が掲載されていますので、参考にしてください。 □記者発表資料 〜プレスリリース  ○林政審議会施策部会の概要について(6/27)  ○日中民間緑化協力委員会第7回会合の開催について(6/27)  ○林政審議会の概要について(6/27)  ○「企業の森林整備・保全活動の促進について(素案)」に対する意見の    募集結果及び処理について(6/22)  ○「企業の森林整備活動に関する検討会」報告について    (第4回検討会概要及び報告書) (6/20)  ○平成18年度緑資源幹線林道事業期中評価委員会地元等意見聴取等の    実施について(6/20) □今月の施策紹介  ○山地災害に備える  ○平成17年度森林・林業白書について □お知らせ  ○新たな森林・林業基本計画の策定に向けて  ○平成18年度山村力(やまぢから)誘発モデル事業の2次公募について  ○「スギ・ヒノキ花粉に関する情報」についてのお詫びと訂正について  ○「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」    について  ○寒波・雪害による災害対策の概要について  ○「森林(もり)づくりと木づかいのお便り」(林野庁メールマガジン)の創刊    について ――――――――――――――――――――――――――――――――― 7.イベントのご案内 会員の皆様からお寄せいただきました情報をご案内させていただきます。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜                   レンズを通して自然観察              「デジカメ森林探検隊」の参加者募集中! 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  林野庁近畿中国森林管理局では、デジタルカメラを通して自然と接し、自然 への近づき方や自然の大切さを学んでもらうことを目的とした、「デジカメ森林 探検隊」を開催します。  当日は、観察・撮影教室、デジカメ撮影会のほか、間伐材を使った写真 フレーム作りを行います。夏休みの工作にも最適!?、是非保護者とともに お申し込み下さい。 【日 時】平成18年8月26日(土) 【開催地】滋賀県大津市一丈野(いちじょうや)国有林 【集 合】JR草津駅東口バス乗り場午前8時45分      (車の方は大津市上田上桐生町桐生駐車場9時45分) 【参加費】1名500円 【定 員】先着40名(小学生と保護者、中学生以上は単独参加可) 【締 切】 8月10日(木) 【問い合わせ・申込み先】       近畿中国森林管理局指導普及課緑の普及係      電話:050-3160-6753、FAX:06-6881-3564(担当:大西)      E-mail:kc_shidou@rinya.maff.go.jp ※ 詳細につきましては、 http://www.kinki.kokuyurin.go.jp/kyoku/category_a/a-02/i_a-02.html   の「デジカメ森林探検隊」の項をご覧下さい。 ********************************* 森林環境教育ネットワークメールマガジン 発行者 肱黒直次 編集者 渡邊純枝 佐藤康弘 URL http://www.zenmori.org/feenet/ ********************************* <編集後記>  「森林・林業基本計画」の策定にむけた作業が林野庁で進められています。 森林・林業に関する計画は、森林所有者から市町村、都道府県、国と様々な 段階で樹立されています。  個人的には、これまでの人生で自ら立てた計画が達成された記憶がほとん どなく、時間が経つほどに計画の存在そのものを疎ましく思ったものです。夏 休みや冬休みのために立てた計画などでは、多くの方が休みの終わり間際に 慌てながら必死に宿題や課題を片付けた経験をお持ちなのではないでしょうか。  社会人になって森林環境教育に関わり、PDCAサイクルを学ぶ機会がありま した。とかくPlan(計画)、Do(実行)まではいっても、Check(検証)、Action (改善)を怠りがちだ、とのある先生の話を聞き、自分の業務実態と照らし合 わせてみると、妙に納得してしまいました。そんなことではなく、Check(検証)、 Action(改善)まで達成してPDCAサイクルの意味を納得したいものです。 *********************************