*********************************         森林環境教育ネットワークメールマガジン               第 24 号              平成18年2月15日 *********************************  □今号の目次    1.連載:森林環境教育道しるべ(3)        森林環境教育は「山と木と人の三角関係」    2.第1回 「企業の森林整備活動に関する検討会」について    3.<レポート1> 青少年自然体験活動全国フォーラム    4.<レポート2> 森林環境教育企画セミナー    5.恩師の最終講義    6.森林環境教育リレートーク    7.林野庁ホームページのお知らせ **---***---***---***---***---***---***---***---***---***---**  寒さがまだまだ骨身にしみる季節ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?  今年は、例年になく寒さと乾燥が厳しい冬となっています。この寒さと乾燥を 好むのがインフルエンザ。各地で猛威を振るっているようです。予防には、 手洗いにうがい、部屋の換気、そして、人ごみを避けることだそうです。  都会に住む方にとっては、毎朝の通勤など人ごみを避けるのは不可能です が、栄養と休息をしっかりと取ってこの冬を乗り切りましょう。  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  ◆ネットワーク会員の登録は2月15日現在 No.402に達しました。  ◆イベント情報    2月1日以降、新たに2つのイベントが登録されました。    詳しくは、ホームページ“イベント情報”まで。 **---***---***---***---***---***---***---***---***---***---** 1.メルマガ1周年記念企画 連載:森林環境教育道しるべ(3)  林業、教育、暮らし、そして環境のなかで起きている様々な問題の解決に向 けてはじまった、森林環境教育。全国各地でさまざまな活動が行われておりま すが、はたしてその向かう先は?  メールマガジン配信1周年を記念してはじまった連載企画。森林環境教育の 道しるべの1つを探るべく、森林環境教育推進委員の方々に、想いを語ってい ただきます。今号は第3弾。どうぞお楽しみください! 森林環境教育は「山と木と人の三角関係」 東京農工大学 佐藤 敬一  「森林環境教育を一言で表わして下さい。」と聞かれたら、  「山と木と人の三角関係」と答えています。  東京大学名誉教授の筒井迪夫先生は「森林文化への道(朝日選書)」のはし がきの中で「森林政策は『山と木と人の融合』という森林文化理念を基本とする べきで、これは、『自然を尊び、護り、次世代へ伝える。森を活かし恵みを得る。 森に暮らし、親しみ、学ぶ』である」と述べている。この森林文化の理念がまさし く森林環境教育の理念です。  筒井先生は融合と言われていますが、私は、より分かりやすくするために低 次元の三角関係(恋愛が低次元と言う意味ではなく、三つの関係より二つの 関係の方が分かりやすいと言うことです。)としました。  それでは、それぞれの関係(漢字)を見てみましょう。 ☆人と木の関係=休  多くの精神的なストレスに曝されている現代の私たちは、森林や公園の樹木 の下では癒されます。また、人工的な空間でも草木があることにより和む。 住空間に木材を多く使うことで安らぎを感じます。このように木は人間に対し 「いやし」「やすらぎ」など精神的(肉体的にも)な安定を与えることを理解する 必要があります。 ☆人と山の関係=仙  古から、山伏や仙人などは精神的な向上を求めて深山に入って修行してき ました。山が自然の中での修行道場として最適であったからです。森林環境 教育の大きな目的の一つは参加者の環境意識の向上です。森林環境教育プ ログラム実施のフィールドとしての山(森林)の必然性がうかがえます。 ☆木と山の関係=杣  山に木が生えているとそこに人の生業(なりわい)が生じます。すなわち、 杣(そま)、今の言葉では林業。私たちは森の恵みを使って生活していること、 そしてその生活がどのように支えられているのか、また、環境負荷の少ない生 活をどのようすべきかなどを、考え、行動していく必要があります。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 佐藤敬一(東京農工大学農学部助教授) 1958年東京生まれ。木材・木質材料の強度などの物性が専門。特に、木材や 樹木の超音波非破壊検査の開発を行っている。「大学で木を教えるなら山に 住まなくては」と、7年前に山梨県上野原市に居住。また、「木材利用促進の ための森林環境教育プログラム開発」や「環境教育手法による大学生協組織 活動の活性化」をテーマとしている。全国大学生協連合会東京地域センター 環境委員長、NPO法人JUON(樹恩)NETWORK理事。 ――――――――――――――――――――――――――――――――― 2.第1回 「企業の森林整備活動に関する検討会」について  林野庁では、去る2月6日に第1回の「企業の森林整備活動に関する検討会」 を開催しました。  近年、企業の社会的責任(CSR)に対する関心が高まっており、このような 背景の下、森林の整備活動等を通じて社会貢献活動を展開したいとする企業 の潜在的ニーズは高いものがありますが、森林の整備活動等は一般の企業に とっては特殊な分野であり、具体的なイメージや手法等について未知な部分が 多いとの指摘があります。  林野庁としては、我が国の森林の整備を国民全体で支えていくためには、 企業の社会貢献活動の参画は重要であると考えています。  このため、学識経験者や企業関係者、NPO等関係各層から委員の参画を 得て、「企業の森林整備活動に関する検討会」を開催し、森林の整備活動等 を通じた社会貢献活動に企業の参加を促す方策等について、提言を得ること としています。  今後、5月までに4回程度開催することとしています。昨年秋の白川郷戦略 会議では、山持ちさんとしての企業の新しいプロジェクトについて話し合いまし たが、この検討会の議論は参考になると思います。  提出資料や第1回の議事概要については、下記のURLをご覧下さい。 http://www.rinya.maff.go.jp/puresu/h18-2gatu/0207kigyou.html  ――――――――――――――――――――――――――――――――― 3.<レポート1> 青少年自然体験活動全国フォーラム  文部科学省及び独立行政法人国立オリンピック記念青少年総合センターの 主催による「青少年自然体験活動全国フォーラム」が2月4、5日に国立オリン ピック記念青少年総合センターで開催されました。  テーマは「連携による自然体験活動のさらなる推進をめざして」です。今回は このテーマに沿って基調セッション、パネルセッション、分科会の内容設定がさ れ、基調セッションでは文部科学省、環境省、林野庁、国土交通省、農林水産 省(説明順)から施策説明、事例発表についても連携に関する事例が多く紹介 されました。  今回、このようなテーマ設定がされたのは、自然体験活動には多岐にわたる 分野がありますが、それぞれの連携を進めればさらに活動が盛り上がるのでは ないかという問題意識があるからです。実際のフィールドでは複数のジャンルを 組み合わせて活動している場合が多いと思いますし、また、他分野の関係機関 と連携して活動の企画等を行えば、参加者や活動の幅が広がります。また、 地域社会との連携という視点もあります。したがって、それぞれの分野の関係 者が相互に連携し、交流を深めることには大きなメリットがあるのではないでしょ うか。そのような方向性をさぐっていくためにこのフォーラムは開催されました。  「連携」について考えると、活動の新しい可能性が見えてくるのではないでしょ うか。(H.0) ――――――――――――――――――――――――――――――――― 4.<レポート2> 森林環境教育企画セミナー  雪の森の中での足跡探し、これは誰の足跡でしょう。  その歩幅から、ウサギはぴょんぴょんのんびり歩いていたことが分かります。 ここで立ち止まって方向転換したのですね。「えっ!」リスってこんなにジャンプ できるの・・・。シカの足跡の周りを見渡せば木の皮をかじったあとがたくさん見 られます。雪の中、少ない食べ物を求めて歩き回っているのですね。  本当に楽しそうに、そして分かりやすく森の解説をしてくださるインタープリター さんのお話に、マイナス10℃以下という寒さの中、垂れそうになる鼻水をマフラー で隠しつつも、純粋に森の自然を楽しめた時間でした。  全国森林組合連合会主催の「森林環境教育企画セミナー」が、2月8日(水) から10日(金)のまでの3日間に渡って、(財)キープ協会キープ自然学校を 会場に開催されました。対象は全国の森林組合や森林組合連合会の方々。 参加者は9名と少なめで、開催前はその少なさ故、少々心配な気持ちもあり ましたが、人数が少ない分、参加者同士、また講師・スタッフと参加者が話し 合う機会も多く、充実した内容だったと感じています。  プログラムは、前述した森の中での足跡探しに加え、森の中での色探しと いった森林環境教育の事例を知るためのアクティビティの体験や、「森林環境 教育の全体像の理解」などの講義、また実際に森林環境教育の企画づくりを する実習などから成り、2泊3日という時間があっという間に過ぎていきました。  参加者の方々の立場や状況はそれぞれ異なり、森林環境教育との関わり方 も様々だと思いますが、すでに森林環境教育を実施している、あるいは今後の 業務において、自然公園の管理に携わることになるため、森林環境教育に積 極的に取り組んでいきたいなど、セミナーの成果を実際の職場で活かすことを 求められている参加者の方が多かったようです。  森林環境教育に取り組む上での課題としては、フィールドの確保や資金調達、 ネットワークづくり、PRなどがあげられましたが、中でも、山林所有者である組 合員をはじめとして、森林組合や森林組合連合会の役員や職員の森林環境 教育に対する意識の改革という声が多くあげられていた点が印象的でした。  森林組合全体として見れば、森林環境教育の波はまだまだ小さなものかもし れませんが、参加者の方々の意欲はきっと大きな波につながっていくものと感じ ました。  行政、NOP、企業、ボランティア、森林組合など様々な立場の方々の協働に この森林環境教育ネットワークが少しでもお役にたてるよう、がんばっていきます。  自然豊かな清里から東京に戻り、満員の通勤電車の中で思い出すのは、 痛いほどに肌を突き刺す雪の中の寒さと、セミナーを実施していただいたキープ 協会のスタッフの皆さんの笑顔です。  やっぱり、楽しみながら学ぶって大事なことですよね・・・ ――――――――――――――――――――――――――――――――― 5.恩師の最終講義  先日、とある大学の名物先生(森林科学科)の退官記念最終講義を受けて きた。テーマは「生産力志向から循環型へ」。先生が大学に入った1960年頃は、 学生たちは皆貧しく、少し金のありそうな友人宅には、おこぼれに預かりたい 貧乏な学生がうようよとたむろしていたそうだ。今の中国などでもそうだが、太っ ていることは裕福のシンボルで、太った人に対するあこがれは潜在意識の底に 染み付いていて、今でも太った人が好きだという感情には抗し難いものがある という。  当時、時代は生産力の時代。林業基本法は林業の産業化を謳った。学生運 動が華やかな時だったが、反権力闘争をリードした進歩的な学生でさえ、階層 の分断や労働者階級の貧困化→社会主義へといったことは訴えても、生産力 増強路線そのものについては微塵も疑うことは無かったという。  1980年頃、一人当たりのGNPが1万ドルを越えたころから社会は変わった。 毎年のように新しい家電製品が生活空間に入り込み、ダイエットとかシェープ アップとか言われ始める。プラザ合意を経て、1ドル360円が100円そこそこに なったことで、海外との距離も一挙に縮んだ。労働者の貧困化というよりは、 一億総中流に代弁される大衆消費社会となって、階級闘争は絵に描いた餅に なる。当時、崩壊前のソビエトを実際に見る機会があって、自壊する社会主義 の命運を確信するに至ったそうだ。  闘争から共生の時代となり、焼肉定食から野菜サラダ志向になり、学問も、 政策批判から政策提言を目指すべきものへと変質してきた。いわゆるポスト モダン=循環型社会の到来の中で、国内の林業が衰退する時期と踵を合わ せるようにして、林業も生産力主義から、森林を冠する環境の時代になった。 わりばし論争に代表されるように、森林を伐ること、木材を消費することその ものを悪とするよう風潮が生まれたのもこの頃だ。こうした情勢を受けて、産 業化を説いた林業基本法は、共生に重きを置いた森林・林業基本法となった。 おそらく森林環境教育も、こうした時代の産物なのだろう。先生は、こうした事 態をもって、パラダイム転換が起きたと断ぜられた。  しかし、本当にそうなのか?生産が本当に後退して良いものなのか?少なく とも森林組合では細分化された土地の組織化(=生産力化)を来年度からの 組合運動の中心に据えているし、林野庁でも国を挙げて外材市場に挑もうとす る新生産システムの話をぶち上げている。現実に日本各地に立地するように なった大規模な木材加工施設はますます勢いを増しているように見える。中国 発展による需給の逼迫を睨んで、中長期的には木材価格上昇を期待する声も ある。総じて「パラダイム」を引き戻そうとする動き、論調が盛んに目に付くよう になっている。  こうしたにわかの生産力論は、既に完了したパラダイム転換後におけるあだ 花なのか、あるいは、そもそもパラダイムは転換していないのか、はたまた対立 するパラダイムを超越するような弁証法的な展開に向けた第一歩と解すべきも のなのか、恩師の最終講義を聞き終えて、思索にふける週末を過ごした。 ――――――――――――――――――――――――――――――――― 6.森林環境教育リレートーク(第4話) 「森林の恵みを発信しませんか」  前走者の方から「地域から学ぶ大切さ」への思いのこもったバトン、しかと 受け取りました。  わたしも同感です。「森林の多面的機能」や「森林は私達の暮らしを守って いる」、そんな言葉、今では一般の本や雑誌にも踊っているけれど、それを頭 でっかちな知識としてではなく、心から実感できたのは、小さな苗木に「かわい いなあ」とやさしく語りかける山のおばちゃんのまなざしや、台風で崩壊した手 入れ不足の林を見たときのおっちゃんの本当に悲しそうな横顔からだったよう な気がします。おっちゃんが休憩のときに、ぽろっとつぶやいた「我が身を飾る よりも山に錦の衣を着せる」という一言も忘れられない言葉です。山で生きて こられた方は、(「環境教育なんてそんな洒落たもん知らんでえ」と言われてし まいそうですが)最高のインタープリターだと思っています。  さて、一方で、森林から遠く離れた街中で生活する多くの子供たち、大人たち にとって、森林と自分たちの生活の関係性は、どうしても実感しにくいものであ るということも事実だと思います。そして、実感を得ずして偏った知識を受け入 れてしまうことで、「人工林はなくしてしまえ」、「木を伐ることは悪いこと」と いった極端な理解にもつながっているような気もします。どうしたら街中に 住む多くの人々に、森林と自分たちの生活の関係性や、森林の恵みを頂く 生活の豊かさについて考えてもらうことができるのでしょうか。  わたし達『薪く炭くKYOTO』(しんくたんく・きょうと)が着目したのが、街中の 『森林の恵み発信基地』です。えっ!そんな基地あるの?いえいえ、お父さん、 あなたが昨夜会社帰りに寄った炭火の焼き鳥屋さん、お母さん、あなたがラン チを食べた石窯ピッツァ屋さん、少年、君がバーベキューの行がけに炭を買い に寄ったホームセンター・・・そんなお店をちょっと大袈裟に呼んでみただけです、 はい。見回してみると、意外に沢山あるものです。その地域の薪炭を使ってい るこだわりのお店もあるでしょう(そう、シェフや板前さんだって、森林のインター プリター)。  わたし達のフィールド・京都では、市内の『基地』を訪問して店長の思いやこだ わりをお聞きし、お店の魅力を地図に盛り込んだ『京都・森林バイオマス絵巻』 を作って、森の恵みを発信中です。  みなさんのマチからも森の恵みを発信してみませんか? 薪く炭くKYOTO S・S → ツリーマスター クライミングアカデミー Y・M ――――――――――――――――――――――――――――――――― 7.林野庁ホームページの御紹介 http://www.rinya.maff.go.jp/ □記者発表資料〜プレスリリース〜 ○ 第1回企業の森林整備活動に関する検討会」の概要について ○ 無人ヘリコプターによる松くい虫防除の実施に関する運用基準案についての    意見・情報の募集について ○ 国際熱帯木材協定(ITTA)改定交渉の妥結について ○ 無人ヘリによる松くい虫防除に関する運用基準作成のための検討会(第4回)    の概要 ○ 第3回 「森林整備地域活動支援交付金制度に関する検討会」の開催について □今月の施策紹介  ○ 平成18年度林野庁予算の重点事項 □お知らせ  ○ 寒波・雪害による災害対策の概要について ○ 政府広報番組ラジオ番組のお知らせ(全国山火事予防運動) ○ 山村力(やまぢから)誘発モデル事業の募集について ********************************* 森林環境教育ネットワークメールマガジン 発行者 肱黒直次 編集者 黒澤 徹 多田裕一 URL http://www.zenmori.org/feenet/ ********************************* <編集後記>  ついに、トリノオリンピックが始まりました。  冬期オリンピックは、飛んだり、回転したりと派手な競技が多い印象があり、 世界トップレベルの選手の華麗な技には、ただただ感心するばかりです。  ところで、トリノオリンピックでは、オリンピックを楽しく、環境にやさしいイベ ントとすることを目的としているそうです。昨年11月に開催された環境への スポーツの影響と貢献について考える「第6回スポーツと環境世界会議」に おいて、トリノオリンピック組織委員会から「トリノサステイナビリティ報告書」 が発表され、温室効果ガスの削減、人工降雪機における水使用量の最小 化、環境にやさしいホテルの促進といった取組みが示されました。  また、今回のトリノオリンピック開催によって、12万トンを超えるCO2が排出 されると予想されており、トリノオリンピックをカーボンニュートラルにすることを 目指すHECTOR計画というものも報告書に盛り込まれています。今回のCO2 排出分を国内外での再生可能エネルギー事業、エネルギー効率化事業及び 植林事業によって相殺することを目標としており、初の試みであるということです。  自然の中で行うスポーツの多い冬期オリンピックです。環境とスポーツとの 共存も今後重要なテーマとなっていきそうです。 *********************************