*********************************        森林環境教育ネットワークメールマガジン               第 16 号             平成17年9月30日 ********************************* □今号の目次   1.山村留学の現状と課題   2.手で見る   3.協同組合の原点にふれて   4.フィリピンの森林・林業事情@   5.林野庁ホームページの御紹介   *********************************  事務局のある東京では先週末から急にひんやり冷たい風が吹きはじめ、 秋の訪れを感じておりますが、みなさんがお住まいの地域はいかがでしょうか。 落ちる日の早さに哀愁を感じつつも、これからの秋の味覚を楽しみに心の中で 小躍りしている今日この頃です。  11月の白川郷での環境教育戦略会議には多くの方の参加申込みをいただ き、ありがとうございました。さまざまな立場や経験を超えて探り合う森林環境 教育の可能性。11月の白川郷はさぞかし寒いことでしょうが、その中で参加者 の方々の熱い議論が交わされることと思います。 「環境教育戦略会議2005in白川郷〜これからの森林環境教育 白川郷宣言〜」 詳細はこちらから   では、今号もよろしくお付き合いください。 ● 会員専用掲示板今月のお題は引き続き「野外活動で役立つアイデア」です。   よろしくお願いします。   ********************************* ☆ネットワーク会員の登録は9月1日現在 No.372に達しました。 ☆イベント情報:詳しくは、ホームページ“イベント情報”まで  ********************************* 1.山村留学の現状と課題  山村留学をテーマにテレビ放映された「みんな昔は子供だった」は、今年の3 月で終了しましたが、山村留学のイメージをもアップする、心の温かくなるドラマ だったと思います。さて、今回は、今年の8月に農林水産政策研究所から出され た「山村留学の現状と課題−平成15年度全国アンケート調査報告書−」を紹介 します。この調査は、外からは見えにくい、山村留学がもたらす都市と農村の交 流や体験の効果を提示することを目的に行われました。調査は、受入校、受入 市町村教育委員会、運営団体、山村留学生及びその保護者へのアンケート調 査により行っています。報告書は、山村留学の軌跡と現状、山村留学の成果と 課題、山村留学生の保護者にみる食・環境・農業支援意識の比較分析、山村 留学に対する留学生の意識の4本の論文により構成されています。  報告書の概要をごくかいつまんで述べると以下の通りです。 (1)財団法人育てる会の調査によれば、2003年度の山村留学は196校、 804人であり、概して増加基調であるが、ここ5〜6年ほど運営団体の経営難 や保護者の加重負担などの経済的問題から頭打ち状態にあり、ひとつの転機 を迎えている。 (2)受入側の主体となる運営団体、教育委員会、受入校の3者は、概して山村 留学による地域活性化への期待が高く、地元住民団体や行政がイニシアティブ を取り実施・推進してきた。その結果としては、教育効果と地域社会活性化効果 への評価は高かったが、地域経済効果についてはあまり評価されていなかった。 (3)山村留学生の保護者は、その多くが山村留学を契機に農業・農村に親しみ を持つようになっており、山村留学などを通して都市住民との交流を深めること は、地域農業の振興側面からも効果がある。 (4)留学生児童生徒は、留学の効果に対して概して肯定的に受け止め、自立 的な生活姿勢の形成、社会性・社交の発展、そして自然や農への理解(価値観) の深化を実感していた者が多かった。  山村留学は、森林環境教育という観点からみればかなりレアな形態ですし、 また、環境教育面の効果と長期間の転地による効果をどのようにして切り分け るかなどの課題もありますが、参考になる点も多い報告だと思います。  さらに報告書をご覧になりたい方は、「林野庁計画課森林総合利用・山村振興 室森林総合利用推進班多田まで」ご連絡を下さい。  電話:03-3502-8111(内線6206) Eメール:yuichi_tada@nm.maff/go.jp 2.手で見る  ”キシュー・・・・””しゅるるるるるる””しゃ−−−−−”  ノミが、カンナが、紙ヤスリが、独特の音とともに木を削っていきます。  職人は、何度となく木にノギスをあて、太さを確認しつつ、時々表面をさすりな がら、黙々と仕事を続けます。  「ハイ、出来ました・・・」ほんの20分程度前までは、ただの木の棒だったもの が、「バット」になっています。  手に取ってみると、なんとも良い手触りです。 木をカンナやヤスリで、削った跡の感触は、他にはない独特の感触で、好きです。 自分が削るのはもちろん、削るのを見るのも、音を聞くのも好きです。 50人程の、見物客が次々に手に取ってみます。 皆、仕事の見事さと、出来上がった作品の美しさにうっとりしています。  前に、何の変哲もない数センチ角の檜の木片と紙ヤスリだけがビニール袋に 入ったセットが、癒しグッズとして販売されていたことがありましたが、ザラザラと ささくれだった木の表面を紙ヤスリでツルツルにするのは、本当に心地良く癒さ れるのでしょう。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  大リーグの松井秀喜選手やイチロー選手のバットを作っている野球用品メー カーの「バット職人(プロバットマイスター)久保田五十一」さんは、平成15年度に 卓越した技能者表彰『現代の名工』に選ばれました。現代の名工は、厚生労働 大臣が卓越した技能を持ち、その道で第一人者と目されている技能者を表彰す る制度です。併せて平成17年春の褒章において『黄綬褒章』を受章しました。 『黄綬褒章』はそれぞれの職業分野においてその道一筋に励んだ技能者に贈ら れる名誉な褒章です。  先日、東京都内の百貨店において開催された「オークヴィレッジ創設30周年 記念展示会・森と生きる。オークヴィレッジ展」の「プロバットマイスターのトーク &実演」に行きました。  トークショーで久保田さんは、中学を卒業して学校の隣りにあった工場に入社 したこと。実は野球経験がないこと。始めた当初は仕事がイヤで辞めたいと思っ たこと。仕上げは物差しではなく手の感覚が頼りであること(「手で見る」と言うそ うです)。  印象に残る選手は、落合・松井秀喜・イチロー選手だそうです。  落合選手は、素手の感覚を大切にし、手袋はしなかったそうです。  松井選手は、高校卒業と同時に久保田さんのところを訪れてバットを注文し、 今でもシーズンが終了すると同時に、シーズン中の感覚が残っているうちにと 翌シーズンのバットを注文するそうです。  イチロー選手は、「あと0.2ミリ削ってくれ」等、特に注文が厳しいそうです。    一流でない選手ほど、一流選手が使うものと同じ道具を使いたがり、力量不 足から使い切れずに途中で投げ出してしまうそうです。  なるほど、会場に展示してあった、イチロー選手のバットはヘッドが大きくか つ重くて、素人では絶対に使いこなせないと思いました。  最後に握手をしていただきました。  あまり大きくはありませんでしたが、厚く、暖かく、子供の頃の近所の大工さん を思い出しました。 3.協同組合の原点にふれて 先日、ある研修会に参加しました。JA・生協・漁協・協同会社そして森林組合 に所属する中堅職員を対象とした研修で、大学の先生のたいへん難しいお話 や各種協同組合での実践事例の報告を聞いたほか、参加者が1班で15名程 度の班に分かれ、与えられた課題に沿って日々の業務から思うことや協同組 合の課題・展望について議論し、成果にまとめていきました。最終日は発表会 で、各班から発表を行いました。 私の班では、組合員との関係が大きなテーマとなり、「組合員との距離が広がっ ている。」、「組合員のニーズに応えられていない。」、「組合員どうしの結びつき も稀薄だ。」などといった意見が多く出されました。 時が経つとともに、組合員の状況や取り巻く社会・経済情勢が変化していくこと は避けられないことではあります。また、組織自体が時間の経過とともに変化し、 時には組織の原点また本来の姿を見失ってしまい、存在意義が問われることも あるかと思います。 森林環境教育ネットワークは、発足してまだ1年も経っていない新しい試みです。 趣旨にご賛同いただいた方々により、掲示板やイベント情報等のコンテンツの 活用を進めていただくことが、ネットワークの成長につながることと思います。 ぜひ、森林環境教育ネットワークに積極的に関わり、ご活用いただくようお願い いたします。 4.フィリピンの森林・林業事情@  戦後アジアの中でも森林の減少が激しい国の一つであるフィリピン。そのフィ リピンにおける森林・林業事情について、現地での体験を踏まえて紹介してい きたいと思います。戦後の急激な木材需要で、熱帯林の多くが、その伐採可能 量を大きく上回る率で伐採され、結果多くの熱帯林が失われていきました。 熱帯木材供給地の一つであったフィリピンにおいても、森林の減少は例外では なく、1900年頃には、フィリピンの国土面積の70%以上(森林面積にして約2100 万ha)を占めていたといわれる森林も現在では20%以下(約500万ha)まで減少し、 その内原生林の面積は数%にも満たないといったことが現状です。もちろん、 近年森林再生のための取組みが続けられていますが、1980年代に20%を切っ てから未だに回復の方向には進んでおらず、環境、防災、経済の面から見ても 深刻な状況となっています。今回から、数回にわたりフィリピンの森林・林業事 情についてお伝えしていきたいと思います。  第1回目は、フィリピンの森林が減少していった原因についてざっと説明して いきたいと思います。フィリピンの森林が著しく減少の一途をたどっていったの は、第2次世界大戦以降ということになりますが、その木材の多くが高度経済 成長期にあった日本に輸出されていきました。その当時の木材輸出の対象と なる木は、ラワンといわれるフタバガキ科の木でした。現在のフィリピンではほ とんど見られないフタバガキ科の木ですが、その当時は豊富に存在していたよ うです。伐採方法は、主として天然林からの抜き伐りで、伐採後には、有用な フタバガキ科の木が抜き取られたその他の樹種で構成される2次林が残され ます。本来であれば、この2次林はしばらくすればまた元の状態に近い森林に 回復する可能性が高いのでしょうが、そうはいきませんでした。伐採後に残され た2次林は、次に放牧用地として利用され、2次林に残った木は、伐採されました。 もちろんすべての2次林が放牧地として利用されたわけではありませんが、その 面積は非常に大きなものでした。   また、一方で急激な人口増加に伴い多くの林地が畑として開墾され、2次林 は回復することなく、結局森林面積は減少していくことになります。ここで一つ 問題となるのが、山火事です。放牧地にしても畑にしても、その利用の際に火 入れを行います。きちんと計画的に行われる焼畑ならともかく、特に放牧地へ の火入れは、面積も大きく火の管理が難しいことから、本来予定していた地域 を大きく越えて大規模な山火事へと発展してしまいます。フィリピンでは、毎年 約1万haの森林(もと森林だった場所)が山火事の被害にあっているということ です。繰り返し、火の入る山は、折角天然更新してきた木も焼き尽くし、ついに は草しか生えない土地になってしまいます。熱帯地域特有の雨季に降る激しい 雨は、草地の土壌を流し、ますます、森林の回復が難しくなります。このような 悪循環をもたらす山火事ですが、地域においては、慣習的に行われてきた焼畑 や放牧地の火入れといった方法が今でも続けられており、植栽しても焼けてしま う、土壌が痩せて十分に育つことが出来ないなど、森林の回復に多くの障壁が あるといったのが現状です。森林が減少した原因には、先に述べたような木材 輸出のための伐採ということも一つありますが、その後の地域での土地利用も 大きく関わっており、熱帯林の回復は、広く様々な面から、その解決策を見出さ なくてはいけないのではないかと思います。次回からは、さらに詳しく、その現状 をお伝えできればと思います。(つづく) 5.林野庁ホームページの御紹介 □記者発表資料〜プレスリリース〜 ○ 「無人ヘリによる松くい虫防除に関する運用基準作成のための検討会(第1 回)」   の開催について ○間伐推進強化期間の取組について ○第4回「21世紀の森林整備の推進方策のあり方に関する懇談会」の開催について ○林政審議会施策部会の開催及び一般傍聴について □今月の施策紹介 ○ 「平成16年度国有林野の管理経営に関する基本計画の実施状況」及び    「平成16年度国有林野事業の決算概要」について □お知らせ ○ テレビ・ラジオ放送のお知らせ(間伐材利用関連) ********************************* 森林環境教育ネットワークメールマガジン 発行者 肱黒直次 編集者 黒澤 徹 多田裕一 URL http://www.zenmori.org/feenet/ ********************************* <編集後記>  今回はテレビの話題が続いて恐縮ですが、NHK教育テレビの「趣味悠々」 という番組で「はじめての里山歩き」というテーマが9月初旬から毎週、全8回 の予定で放映されています。番組の性格上、対象としているのは中高年層で あり、安全に楽しく、かつセルフガイド的に自らコース設定を行って歩いていく ためのコツを解説するというような内容になっています。歩く場所は極めて人里 に近いところで、「道に迷っても人家にぶつかるので大丈夫です」というような 解説もされています。団塊の世代のリタイアにまつわる様々な問題が「2007年 問題」と言われていますが、森林環境教育のサイドからすれば、余裕の出来た 時間を「里山歩き」に費やすような方々をどのようにして、さらに「森林の中に」 入っていってもらえるかというのも重要な課題のひとつです(H.O)。 *********************************